『諦める』という最善手。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%8A%E5%B3%B6%E5%B0%86%E4%B9%8B
棋士レーティング(強さを示す数値)
http://kishibetsu.com/ranking2.html
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豊島二冠は「序盤、中盤、終盤、隙がない」と言われるオールラウンダー型の棋士である。
4歳で将棋を始め、その後は関西将棋会館道場で腕を磨いたそうだ。
当時は「関西に天才少年現る」と評判になったという。
そんな豊島少年は史上最年少の9歳で棋士の養成機関である奨励会に入会した。
ちなみに9歳の時点でアマ六段(ものすごく強い)の実力であった。
プロデビュー(四段に昇段するとプロ)は16歳。
高校2年生の時だった。
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幼い頃から才能を高く評価され、将来の名人になるだろうと言われていた。
レーティング(戦闘力)は現在2位だが、トップの時期も多くある。
そんな豊島二冠も過去にタイトル戦は4回ほど挑戦している。
しかし、全てにおいてタイトル奪取はできなかったのだ。
なので、初タイトルを獲得したのは今年である(28歳)。
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現在、現役棋士は165人。
その中で8割以上はタイトルを取った経験は無く、ほとんどの棋士はタイトル戦の舞台に立つ事さえない。
(将棋の)天才だらけの養成機関を勝ち抜き、一部の超天才だけで戦うプロ棋士。
その中でも光る超超天才のみがタイトル戦に挑戦し、超超超天才がタイトルを戴冠する、という非常に厳しい世界だ。
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豊島二冠(当時七段)は2014年3月に開催された『第3回将棋電王戦』に出場している。
第3局でYSSというソフト相手に対局して見事に勝利した。
(ちなみに、第3回電王戦で5人の棋士が出場したが、勝利したのは豊島二冠だけである)
その準備がまたストイックで、1,000局を超える練習対局で対策している。
その対策の過程で『将棋ソフトは中盤が強い』ということに気がつく。
「序盤、中盤、終盤、隙がない」と言われる豊島二冠も自己分析では「中盤に苦手意識がある」としている。
そこで、コンピューターの中盤力を自身に取り入れるため、電王戦対策が終わった後もソフトを使って研究を続けるようになり、棋士との研究会にも顔を出さなくなった。
努力もできる天才棋士なのだ。
…と如何に豊島二冠がすごいのか、ということを説明してきたけど、言いたいことはそれではない。
先日、『羽生善治とAI世代』というTVの放送があった。
その中で豊島二冠にスポットを当てた内容があり、
「中盤力を付けることを諦めた」
「マンガやテレビを観て過ごした」
との内容があり、とても驚いた。
とてもストイックなイメージのある棋士だったから。
きっと上手くいかず、煮詰まったのだろう。
将棋では敢えて駒を捨てて、局面を良くするという場面がある。
そこで『中盤力を捨てる』という自身の“新手”を指したのだろう。
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その新手が最善手だったのかもしれない。
長い間、誰もが実力を認める『無冠の帝王』だった。
しかし、今は棋聖、王位と連続してタイトルを獲得し、現在は唯一の複数タイトル保持者である。
『やり過ぎ』はプラスに働かないのだ。