タバコ吸っていたのはモテたかったから。

私は23歳の時にタバコをやめた。まだ買ったばかりで16本も入っているマイルドセブンを彼女に渡し、「もうそれいらない!」と宣言したのだ。彼女はどうせすぐに吸うだろうと思って捨てずに1ヶ月ほどバックに忍ばせておいたそうだ。もう吸うことはなかったのだが。ちなみに人生初の禁煙宣言で見事成功させてみせた。1打数1安打だ。

 

私は今でも付き合いのある同級生が10人ほどいるのだが、禁煙成功者は私を除くとたった1人である。

今は愛煙家は肩身の狭い思いをしているだろうにみんな本当にタバコが好きなんだなぁと思っていた。

しかしかつては私はみんなよりも断然ヘビースモーカーだったのだ。こんな美味いものはない。一生付き合っていこうと思っていた。缶コーヒーとの相性は最高だ。他に何もいらない。

 

夜中の2時くらいにふとタバコ吸おうと思ったら空箱だった。季節は冬。1番近い自販機まで歩いて7、8分だ。

私は迷わず買いに行く事を決めた。普段は面倒くさがりだがこの時は即決だ。すぐ行動した。買ったタバコを吸いながら歩いて帰っている時に、この寒いなかこんな時間にわざわざ買いに行くなんて、我ながら「俺はタバコが好きなんだなぁ」としみじみ思っていた。

 

しかし学生が終わったら無性にタバコをやめたくなった。なんなんだこれ?と。百害あって一利なしだ。一生付き合っていくつもりだったが突然のお別れ宣言をした。

 

その時に私はタバコを吸っていた理由に気が付いた。ニコチンなんかではない。学生特有の「ルールを守らないことで目立ち、チヤホヤされること」が目的だ。なぜなら未成年で違法だから。ルールを守らない俺カッコイイだ。学生時代を有利に進めるための合理的な選択だったのだ。しかし社会人になったらルールを守らないことは突然ダサくなる。信用第一だ。タバコなんか吸っていても誰もチヤホヤしてくれない。むしろマイナスだ。ニコチンのパワーは、もはや「全く合理的でなくなってしまった喫煙」を私に継続させることはできなかった。

 

そういえば校則で禁止されていた時は必死に髪を染めていたが、大学に入り自由になる(特別ではなくなる)と黒髪で生活していた。

 

私が中毒になっていたのはニコチンではなかったのだ。